当時、とても貴重かつ高価であったクロノグラフは、RAFでの役目を終えた後、鋼鉄の女史サッチャーの政権下、外貨獲得を目的として、全ての裏蓋の刻印に線を引かれ、払い下げられています。そして、他国の軍などで使われきって最期を迎え、ほぼ出てくることのないとても珍しい品です。
画像の左の円盤が普段使われる秒針、そして右の円盤がクロノ機能使用時の分針、そしてセンターの秒針は普段使われず、クロノ機能使用時にのみ使われる仕様となっています。クラウンの上のボタンがスタート/ストップ用、そして下のボタンがリセット用です。ストラップは18mm幅が使用されるのが標準的ですが、このクロノモデルに限り20mm幅となっています。
画像のシリアルナンバーが、このクロノグラフは77年製の77番目であることを示しています。この個体は、その数字の並びの希少性などから、どこかで持ち出だされ生き残れたのではないでしょうか。 そして、ご覧のとおり、この時計にはイギリス政府官給品の証であるブロードアローが文字盤、裏蓋の両面ともに記されています。
ムーブメントのメカニズムはバルジュー7733。バルジュー社は1978年に7733系の生産を中止しておりますから、製造年を考えるとその直前のものです。(こちらのクロノグラフ機能に関してはロンドンの一流時計ディーラーで既に調整済み)
また、パイロットが厳しい環境下で実装していたため、時針・分針のトリチウムの蓄光塗料は残っておりませんが、文字盤もオリジナルのままでリダンはありません。ストラップも当時のオリジナルが付いています。
ここまでオリジナルの状態を保ちリダンの施されていないものは本当に珍しいと思われます。ある時期、価値ある時計とみなされたものの多くが、その価値を上げようと一斉にリダンされ、そのリダンによって逆に本来の価値を失ってしまったのは本当に残念なことだと思っています。
かたや、ミリタリー・ウォッチのコレクション価値は上がる一方のようで、イギリスではこのRAFクロノモデルのレプリカですら10万円以上で取り引きされているそうです。
しかしながら、オリジナルの有する魅力と価値が何に代えられると言うのでしょう。
"Go for the original"、このアイディアに尽きると思います。
BRITISH EQUIPMENT TRADINGは、イギリスの品々の、そうしたオリジナル品の持つ魅力や来歴を皆様と共有すべくお伝えしていきたいと考えています。
CWC(キャボット・ウォッチ・カンパニー) ロイヤルエアフォース クロノグラフ 1977
ケース径:横41×縦47×厚さ14mm
価格: